同じことを何度も言わずに済むように、指示のかたまりを小さくする考え方です。
「じゅんびして」「かたづけて」が通りにくいのは、その言葉が複数の作業をひとまとめにした呼び名だからです。大人は中身を知っているので一語で済ませられますが、中身が分かっていない側からすると、何から手をつければよいのか手がかりがありません。
解決の方向は単純で、まとまりを分けて、いま取りかかる1つだけを示すことです。全部を並べて見せるより、「つぎはこれ」が分かる状態のほうが動き出しやすくなります。
「じゅんびして」を分解すると、たとえば「ランドセルを持つ」「連絡帳を入れる」「水とうを入れる」「上着を着る」のように、いくつもの作業が入っています。これを一語で受け取るには、①その言葉に何が含まれるか知っていて、②順番を自分で組み立てられて、③途中で何をしていたか覚えていられる、という3つが同時に必要です。
どれかが難しいと、その場で止まります。止まっているのは、やる気がないからではなく、次にすべきことが特定できていないからです。ここで声かけを強めても、情報の量は増えないので状況は変わりません。
むしろ急かされる感じだけが増えます。
実際にどう分けるか、よくある場面で見てみます。あくまで例なので、ご家庭の実際の流れに合わせて調整してください。
「じゅんびして」を「かおをあらう → きがえる → かばんをもつ」の3つに分けます。ここで詰まりやすいのは、たいてい着替えの部分です。詰まるようなら「うわぎをぬぐ → シャツをきる → ズボンをはく」のように、その工程だけをさらに分けます。全部を細かくする必要はありません。
「かたづけて」を「くつをそろえる → かばんをおく → てをあらう」に分けます。帰宅直後は疲れていることが多いので、工程は少なめにしておくほうが動けます。ここで欲張って宿題まで入れると、最初の一歩でつまずきやすくなります。
「おふろ入って」を「ふくをぬぐ → からだをあらう → あたまをあらう → でる」に分けます。順番が毎回違うと迷うので、家庭の中では順番を固定しておくと定着が早くなります。
3つの例に共通するのは、まず粗く分けて、詰まった1か所だけを細かくするという進め方です。
最初から完璧な手順表を作ろうとすると、作るほうが先に疲れてしまいます。
うまくいかないときは、工程を減らす・順番を変える・写真に差し替える、のどれかで改善することが多くあります。1回で完成させようとせず、少しずつ形を変えていってください。
この方法のねらいは、本人が動きやすくなることだけではありません。同じことを何度も言わずに済むようになるのも、同じくらい大きな効果です。声かけを繰り返して、そのたびに反応がないことに疲れる——という消耗が減ります。
そのためには、手順を「大人が読み上げるもの」ではなく「本人が見に行くもの」として置くことが大切です。最初は一緒に見る必要がありますが、慣れてきたら「どこ見たらいい?」と促すだけに変えていきます。
指示の回数が減っていくこと自体が、うまくいっている印です。
また、うまくいかない日があっても仕組みのせいにしなくて構いません。体調や環境で左右されるのは当然のことで、毎日同じようにできることを目標にすると、大人のほうが先に続かなくなります。
手順を作る負担そのものも減らせます。やることステップの「URLで渡す」を使えば、一度作った手順をそのまま家族や先生に渡せます。受け取った側は同じ手順を見ながら、その場に合わせて足したり削ったりできます。同じ子に対して大人がそれぞれ別の手順を作る、という無駄がなくなります。URLを知っている人は誰でも開ける点だけ、渡し方に気をつけてください。
みとおしのやることステップは、作業を手順に分けて、いま取りかかる1つを示せるツールです。ブラウザだけで使え、入力した内容は端末の中で扱われます。
1日全体の流れを見せたい場合は絵カードスケジュール、ひとつの作業にかける時間を伝えたい場合は視覚タイマーが向いています。手順と時間はどちらも「見通し」の材料なので、組み合わせると効果が分かりやすくなります。
まずは3つ程度から始めるのがおすすめです。細かく分けるほど丁寧に見えますが、数が増えると見ること自体が負担になり、続かなくなります。実際に使ってみて詰まる箇所が見つかったら、そこだけ細かく分け直してください。
写真やイラストを手がかりにすれば使えます。むしろ、いつも使っている実物の写真のほうが伝わりやすいことがあります。文字と絵を併記しておくと、読めるようになってきたときにそのまま移行できます。
慣れるまでは同じものを出し続けるほうが安定します。見なくてもできるようになった工程は外していけばよいので、最初から減らそうとしなくて大丈夫です。ただし、久しぶりの場面や環境が変わったときは、また出すと安心につながります。
そうとは限りません。これは取りかかりを助ける補助的な方法で、効果を保証するものではありません。詰まる箇所が続く場合は、分け方が合っていないのか、別の要因があるのかを見分ける必要があります。困りごとが続くときは専門家にもご相談ください。