気持ちを聞き出すより、選べるようにする。そのほうが伝わることがあります。
「どうしたの?」に答えられないのは、隠しているからではなく、いまの状態に当てはまる言葉がまだ手元にないことが多いためです。
大人でも、動揺している最中に自分の気持ちを正確に言葉にするのは簡単ではありません。
そこで、ゼロから言葉にしてもらうのではなく、いくつかの選択肢から選べる形にします。選ぶだけなら負荷がずっと小さく、言葉が出ないときでも指をさせば伝わります。
気持ちを言葉にするには、いくつもの段階が必要です。自分の中の感覚に気づき、それに名前があることを知っていて、その中から近いものを選び、相手に伝わる形で口に出す——この一連を、気持ちが動いている最中にやることになります。
加えて、強い感情のさなかは言葉が出にくい。これは誰にでも起こることで、落ち着いてから「さっきはこうだった」と話せる場合も多くあります。
その場で言えないことは、分かっていないことと同じではありません。
だからこそ、聞き方を変える意味があります。「どうしたの?」は開かれた質問で、答えるのに一番手間がかかる形です。「これ? それとも、これ?」のほうが答えやすくなります。
気持ちの言葉は、困っている最中には増やせません。落ち着いているときに、日常の中で少しずつ触れておくほうが身につきます。
すぐに使えるようにならなくても構いません。
言葉に触れた回数が、いざというときに選べる材料になります。
あわせて、大人の側も無理をしないでください。気持ちが動いている場面に付き合うのは消耗します。その場で完璧に対応できなくても、落ち着いてから戻ってくれば十分に伝わります。
うまく対応できなかった日があっても、それで積み重ねがなくなるわけではありません。
気持ちが大きく動く場面は、家庭ごとにだいたい決まっています。買い物の途中、遊びを終えるとき、予定が変わったとき——記録を取るまでもなく、思い当たる場面がいくつかあるはずです。
くり返す場面が分かっているなら、その場での対応だけでなく、起きる前に手を打つことができます。買い物の前に買うものを決めておく、遊びの終わりを先に見せておく、予定変更を早めに伝えておく——いずれも、気持ちが動く前に見通しを渡す方法です。
これは我慢させるための工夫ではなく、不意打ちを減らす工夫です。
同じ出来事でも、心の準備があるかどうかで負担はかなり変わります。すべての場面に備えることはできませんが、頻度の高い場面をひとつ選んで手を打つだけでも、日々の消耗は変わってきます。
みとおしのきもちメーターは、いまの気持ちを選んで表せるツールです。言葉が出ないときでも、選ぶだけで伝えられます。入力した内容は端末の中だけで扱われ、外部には送信されません。
気持ちが動きやすい場面が決まっている場合は、絵カードスケジュールで先の見通しを示しておくと、そもそもの負荷を減らせることがあります。切り替えの場面がきっかけになりやすいなら視覚タイマーも合わせて使えます。
まずは2つか3つから始めてください。多いほど丁寧に見えますが、選ぶこと自体が難しくなります。慣れてきて「どれも違う」と言えるようになったら増やす、という順番だと無理がありません。
違っていても、まずはそのまま受け取ってください。訂正されると、選ぶこと自体をやめてしまうことがあります。回数を重ねるうちに、より近い言葉が選べるようになっていきます。最初から正確さを求めなくて大丈夫です。
「こういう感じかな?」と確かめる形なら役に立ちます。ただし決めつけにならないよう、違うと言える余地を残してください。本人が首を振れる関係があることのほうが、正確に言い当てることより大切です。
そうとは限りません。これは伝え方の選択肢を増やす補助的な方法で、効果を保証するものではありません。合う方法はお子さんによって違います。気持ちの表し方や対人関係で困りごとが続く場合は、医師・臨床心理士・特別支援の先生など専門家にご相談ください。